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 別にこれといって意地もこだわりもなく、左右入れ違いにバラを入れないと入らない。という味も素っ気もない理由である。

 
 デザインも変える気がない。「HORIKI ROZEN」などと横文字にする気もなく、今の箱を使わなくなる時は段ボール箱を使わなくなるときだろう。

 
 お隣の萬花園・森谷さんの箱は、親父さんのトレードマークの紳士ヒゲを箱にあしらってあり、インパクト大であるが、我が家の箱は「伊那天竜のバラ」としか書いてなく、別に何の面白味のない。

 
 自慢できる事と言えば2つ。

 一つはいいダンボール紙使っています。ちょいと他の箱と比べてもらえば分かるんですが、ちょっとやそっとじゃメゲません。水にも強いです。

 

もう一つは我が家の祖父、祖母の手作りです。祖父母は梨作りをしているのだが、果樹農家は雨の日は仕事ができないので、ひたすら箱を組み立ててくれたり、堀木園芸名物の新聞紙を広げてくれたりと手伝ってくれるのである。

 

祖父は昨日誕生日で87歳になった。最近ではだいぶ足腰にガタが来ているらしいが、祖母と何やらブツブツ言い合いをしながら2人で仲良く仕事をしている。

 

農家は会社ではない。一人ひとりは労働者であり経営者であるが、それ以前に家族だ。

 

家族みんなが元気で仲良くいること以上に健全経営はない。

 

人生はパパメイアンのように美しく儚い。どんな花もいつかは散ってしまうが、少しでも長く今の堀木園芸でありたい。


2007年10月21日(日)「  待てば海路の日和あり  」    「到花日数」という言葉をご存知だろうか?

 生産者や市場の人なら当然ご存知だろうが、字の如く「花に到るまでの日数」ということだ。

 つまり、出荷するためにバラを鋏で切ったその日から、その切り枝から次の花が採花できるまでの期間なのだが、バラは一株から年間に何回も採花することができる。

 

 花き生産者は何でも坪で計算する。採花本数も年間一坪からどのくらい採花できるか、要は

年間出荷総本数÷栽培面積(坪)=坪採花本数

となるわけだが、我が家ではこの坪採花本数が300本を下回る品種が非常に多い。

 

 300という数字はなかなか分かり辛いものだろうが、どんな数字かというと種苗会社のカタログに採花本数300以下のバラは掲載されていない。

 

 言わば「落ちこぼれ」だ。

 

その最たるものが、我が家ではジプシーキュリオーサのスプレーやオリエンタルキュリオーサ、プリンセスオブウェールズで、つまり到花日数が著しく長いものたちだ。

 

 「落ちこぼれ」と言っても営利切花的にというだけで、とてもいいバラたちだと私は思っている。

 

 ジプキュリやウェールズたちはスプレーだから仕方ないが(仕方が無いといっても長すぎる!)、オリキュリの冬場の到花日数80日間は恐れ入る。10月の末に切れたと思ったら。次は年明けって!!

 

 でも、出張で何日か空けて家に帰ってくると、「待っていたわよ!」と言わんばかりに脇芽が伸びていたり、急成長を遂げていたり。

 

「コノヤロー!」

 

 普段、時間にルーズなくせに、たまにこっちが遅刻すると鬼の首でも獲ったかの様に文句をつける人は、人間にもいる。

 

 慌てない。慌てない。ひと休み。ひと休み。

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