2007年10月25日(木)「 コマーシャル 〜ロマンティックキュリオーサ編〜 」
久しぶりに定時で帰宅できたバスの中、真吾は車窓から家路までの風景を眺めていた。
信号でバスが停まる。無意識に交差点に立つ女性に目が行く。夕暮れで良くは見えないが、清純そうな若い女性は小柄で白のワンピースがよく似合い、美人そうな感じがした。
遠くから冴えない格好をした青年が「取るもの取らずに」といった風体で走ってくる。
「あらら。遅刻だな」
と真吾が思うや否や稲光のようなビンタが青年の頬にいななき落ちた。
動き出すバスの中、真吾は青年への深い同情と共に、女性を見送りながら妻のことを思い浮かべる。「恵美ちゃんそっくりだ。」