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志は皆、帰国後就農であったが、全てはそう上手く行かないらしく農業を生業としていない者もいた。

 

そうであっても、何かしら農業や生産との繋がりを持ち日々邁進しているようであった。

 

プライベートな事、仕事の事、思い出話、欠席した人の近況など話は多いに盛り上がり未明まで酒盛りは続き、うわばみの私もご機嫌で話をしていた。

 

早朝(といっても8時位だが)、朝食の用意が出来たと早起きの友人が私を起こしに来た。

 

私は久し振りの許された寝坊を「もう少し寝かせてくれ」とせがんだ。

 

暫くすると再度友人2人が私の惰眠に渇を入れに来たが、私も再び許しを請うた。

 

厭きれた友人が私を置いて部屋を出る時、「堀木は食べ物を粗末にするようになったな」と呟いた。

 

私は「中途半端に食べるより、全て残した方がいいに決まっている」などと思い、寝続けた。だが今は己がした行いと稚拙な屁理屈につくづく後悔している。

 

オランダにいた頃に食うか食わずの貧乏生活をし、私自身も農家の端くれと普段から偉そうに「食べ物を大切にしろ」と豪語しているにも関わらず、私の食材に対する敬意と食物が私の口に入るまでに携わってくれた人への感謝の念が腐食されてしまったようだ。

 

バラ農家の我が家は祖父母が作ってくれる野菜以外は全て買っている。

 

「金を稼げば飯などいくらでも食える」と言うのは自給率の低いこの国において驕り高ぶり以外の何ものでもない。

 

5年前、帰国して最初めて口にした米の旨さに涙を抑えきれなかったことを忘れないようにしようと、お土産の「新撰組局中御法度書レプリカ」と「三番隊隊長・斎藤一モデル模造日本刀」に誓った。(↑超ウレシィ!)



2007年12月4日(火)「 土と水と ~水の巻~ 」 

 前回からの続きで話は水耕栽培。

 

 水耕栽培とはコの字の型のレーンの中にロックウールやココピート等を敷き詰め、その培地にバラを定植し、頻繁に化学肥料の混入した溶液を流し、廃液は外に出す。

 

 簡単に言えば、めちゃめちゃ長いプランターに土の代わりになる何かを入れ、水に溶かした肥料をがんがん流し込んでいる。という事である。

 

 前々項に幾つかの専門用語が使われている事、また培地の種類や肥料の配合比率など選択肢が多いことから知識的・技術的にも高度である。という事を推測して頂けるだろう。

 

長所は花弁数が多く花が大きい。長さも良く伸び、本数も沢山切れる。水分を含んでいる培地の表面積が少ないため、湿度管理も容易。ベンチ(棚上げ)で仕立てれば、仕事が全て立ったままで出来る為、作業性が良い。

 

短所は設備投資に莫大な費用がかかる。施肥回数も多いのでランニングコストもかかる。葉が大きくなる。樹の寿命が短い。花保ちが悪い。

 

これもまた大要ではあるが、特質すべき点は丈も長く花の大きい立派なバラが数多く取れるということであろう。

 

上記の様なバラが栽培できれば高収入が期待できる。しかし費用も莫大にかかっているので、安易に水耕栽培だから高利潤とは限らない。

 

また土・水の巻で記した長短所は悪までも我が家での性質である。

 

そして言うまでもないが花の大きさ、長さ、本数、花保ち、開花状態などは土耕・水耕のそれよりも品種の特性に起因される。

 

また同じ品種、同様の栽培方法であっても産地が違えばバラの品質は玄人の目から見れば大きく異なる。

 

土耕・水耕共に長所があるから現在日本各地において両方実用されている。

 

一概にどちらかを善し悪しと言い切ってしまうのは明らかに愚考である。

 

さあ、ここからはあなた自身がお好みの栽培方法を見付けて下さい。

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