よく中国人は食器とテーブル以外は全て食べる。とかフランス人は食べるために生きている。などとブラックジョークを耳にするが、人間の雑食性は凄まじいものがある。
グルメ・大食・スローフードブームの昨今。人々の食に対する意識とお金の使い方にはエンゲルさんもドイツでびっくりしているであろう。
そもそも食欲というものは三大欲求の一角を担うほどの大きな存在であり、生命を繋ぐ基本であるのだから重要なのは凡庸な私でも重々承知なのだが、ここまで毎日の様に目にする食に対する過剰な情報には満腹時には吐き気すらする。
近年の食に対する意識などというものは最早、栄養摂取などではなく嗜好の存在なのだろう。
嗜好品の一端である花はどうであろう?
稀にニュースなどで取り上げられるが、主役としてメディアで取りざたされる事はない。
同じ一時の贅沢という意味では同様に扱って頂いてもいいようなものだが、扱いとしてはハリウッドスターと無名若手芸人くらいの格差がある。
以前、何故散り際美しい桜を日本人は賞するのに、花足の早いバラを倦厭するのだろうと疑問に思っていたことがある。
人に聞いてみたところ答えは簡単であった。
「タダだからだよ。」
そういえば花見と名乗る桜見学は概ね無料である。
本物の嗜好と贅沢とは何であろう?
一日の仕事を終え、夕闇迫る中、好きな音楽を聴きながらゲレンデへ向かう。
不恰好に握られたおむすびを鼻歌混じりに両頬へ押し込み口いっぱいの米を貪る。
そんな日常が至高だと感じる私にはグルメやセレブなど知る由もない。