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 「イントゥリーグ」「パパメイアン」「ザ・プリンス」「イリオス!」「アブラハムダービー」

 

 3月中旬には帰ってきそうだ。

 

 ウェールズのお姫様もその頃だろう。彼女は流石に姫なので悠長に育つ。

 

 「ジプシーキュリオーサ」「ワンダーウォール」「バイアモーメント」「オレンジジュース!」は6月下旬まで、まだまだ養成させる。

 

 あれ程、小さく切り戻したのに、小さな芽だったのに太陽に向かって力強く大きくなった。

 

長い冬を抜けいよいよ重油代で冷えきった我が家に春が訪れる。

 

 収入が減ってガリガリに痩せ細っているはずの私は、何故か秋より肥えている。

 

 生命の神秘ってホント不思議だよねぇ。


2008年2月21日(木)「 完全無農薬 」 

 私は長野県農業大学校で農業の基礎知識を学んだ。

 

 「学んだ」と豪語しても実際は、金髪頭でチャラチャラした格好をして不定期的に授業に出ては睡眠学習に勤しんだ。

 

 優等生と言うものには程遠い存在であった。

 

 我が家のバラ「ブライダルピンク」はお局様といっていい程、大御所である。

 

 品種の移り変わりが多いバラの世界において、パテントが切れても尚、切花業界に残っているバラは奇跡に近い。

 

 良く市場からは「もう辞めれば。」などと非常なお言葉を頂くが、日柄の良い婚礼の多い週は注文も良く入り中々の稼ぎ頭だ。

 

 もう土耕で定植して13年ほど経つ。

 

 樹もだいぶ老齢化してきたが、まだまだ沢山の花を咲かせる。

 

 しかし、最近は気がつくとカイガラ虫に侵食されている。

 

 本来は硫黄合剤が有効なのだが、現在使用しているハウスの資材に悪影響を与えるため使用できない。

 

 色々調べたが、農薬散布のポンプで水を送り、ジェットノズルで彼奴らを吹き飛ばすことにした。

 

 樹一本一本にジェット水流を当て、カイガラ虫を退治する。

 

 時間もかかるし、面倒くさい作業だ。

 

 大学の時、講師の先生が最大最強の農薬は「テデトール」と「ハイツクバール」だと言っていた。

 

 勘のいい私はご満悦のオヤジギャグに苦笑と共に冷たい視線を送ったものだ。

 

「テデトール(手で取る)」「ハイツクバール(這い蹲る)」

 

しかし、今となってはマスクも手袋もいらないこの害虫駆除が大変気に入っている。

 

バラの木の間からこぼれる光に水しぶきが光り、藁が香る。

 

私も将来自信を持って、完全無農薬のオヤジギャグを言い、冷たい視線を浴びたいものだ。

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