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 先日、東京に赴いた際に、いつもご贔屓にして頂いている、お花屋さんに顔を出した。

 

 吉祥寺のジェンテさんである。

 

 主宰の並木さんは私がふらっとアポなしで訪ねても、いつも笑顔で迎えてくれる。

 

 店内はどこに目を向けても、ワクワクするような花や葉、小物が並び、その花の一つ一つを楽しそうに説明してくれる並木さんは、純粋にお花が好きな少女のようだ。

 

 スタッフの方も私のような大きな男が、店内を徘徊しても嫌な顔一つせず、快く見守っ
てくれる。

 

 元来、花屋という空間は男子には踏み入れがたい空気感がある。

 

 しかしジェンテにはそれがない。

 

 何やら腰を据えて紅茶でも飲みたくなる雰囲気だ。

 

 まあ、それでは大層迷惑なのでやらないが、ふと目を留めるとオリエンタルキュリオーサ(以下オリキュリ)があった。

 

 我が家の娘ではないようだ。

 

 我が家がオリキュリを栽培し始めた時には、オリキュリを生産している産地は全くと言っていい程なかった。

 

 最近は少しではあるが、増えたらしい。

 

 オリキュリは他のキュリオーサシリーズの中でも癖のある品種で、バラ作り一筋40年の父でも苦労している。

 

 どういう経緯でオリキュリを創めたか存知あげないが、オリキュリやアブラハムダービーを栽培している生産者を見ると少し同情したくなる。

 

 私は花業界をサーカスに例えるなら、我が家はピエロになりたいと思う。

 

 巨大な農協、経済連、大規模経営の産地はサーカスの目玉の猛獣ショー。

 

 唯一で秀逸のバラを作る個選農家は人々を虜にする空中ブランコ。

 

 我が家は、おどけて馬鹿にされながらも、人に笑顔を与え、お客様を引き込むピエロになりたい。

 

 どこかのピエロが育てたオリキュリが、美しく私を見ていた。

 

 私を応援してくれているようであった。

 

 よし!柔軟をしよう!(そうじゃないな・・・)

2008年5月27日(火)「 Dump 」 


 先日、世田谷市場の中卸し組合が開催する「ストリートライブ」と呼ばれるイベントに参加した。

 

 有名フラワーデザイナーがライブ形式で花を活け、花器の販売や音楽演奏などが催された。

 

 私は生産者ブースと呼ばれる、自社製品を生産者が様々な手法でPRする場で、我が家のバラを展示した。

 

 昼食を済ませ、午後6時開場の準備をした。

 

 エルフバケットに品種ごと名札を付け展示する生産者、産地の風景をパネルにして飾る産地、スーツ姿でバラ風呂や花のプレゼントで大々的にインパクトをつける産地など様々だ。

 

 我が家は持ち込みの花器に何品種か花瓶活けや花束にして展示した。

 

 展示箇所も通路より若干奥まった所にあり、これと言って大袈裟なPOPもなく、花色もマットな色合いが多いためか、こぢんまりと展開していた。

 

 パラパラと来る入場者の質問に答えていると、やっちゃば風の中年男性が近寄ってきて、我が家のバラを一通り見渡した後、

 「この中のどのバラが売れてるの?」

と、藪から棒な質問から始まり、

 「おじさんの店ではこういうはっきりしない色のボテッとしたバラより、高芯剣弁の明るい色のばらじゃないと売れないね。」

 「流行に惑わされないで、花持ちのいい土耕のバラを作った方がいい。」

と、長々とご高説賜った後、

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