若輩者とはいえ、私は今まで数多くのバラ農家の温室に足を踏み入れた。
その私が思うに、土耕栽培において、神奈川秦野市の谷さんのバラ作りは、間違いなく「天下無双」の実力である。
牧草に囲まれたバラは、竹林の如く、上へ上へと枝を伸ばし、その枝にはことごとく青々とした厚みのある葉が茂っている。
蕾をつけているバラは、細身だが力強く、花切り作業を想像すると憂鬱になるぐらい、木々は花を付けている。
未熟者の私だけなら未だしも、熟練した全国のばら職人の褐色オヤジ共も唸りをあげる。
少しでも、情報を聞き出そうと、誰しもが谷さんに群がり、四方八方から質問が飛び交う。
しかし、その答えには更に驚愕を覚える。
施肥も土壌に含まれる栄養も農薬散布も極端に少ない。
勘のいい人の事を「鼻が効く」とか「鼻が良い」という。
剣の達人は、敵が近付いただけで、血の匂いがするという。
鋭い感性は嗅覚を刺激するようだ。
データや数値を蔑ろにするのは、今のご時世甚だ愚かではある。
もしかしたら、谷さんのバラ栽培にも極秘の生育数値があるかもしれない。
しかし、職人の勘や感性の様に、バラを見て感じ取る「匂い」や「声」を嗅ぎ取れる生産者に私もなりたい。
その為にも、酒臭い自分自身であってはならない!
・・・ウコン飲も。