圃場に着くと連帯感の無い私は、イケメン営業マンの本田さんの後などには一切従わず、心の赴くままに新品種を物色した。
独り言を口元から垂れ流し温室内を徘徊する。
良さそうなバラを発見すると、直ちに携帯電話で写真を撮り、堀木園芸ご意見番のお花屋さんにお伺いを立てる。
そこでも更にいい返事が返ってくると、早速市場へ問い合わせ。
0.2秒で不採用の返事が返ってきた(ハァ・・・↓↓)
気を取り直し、キリンの圃場でキリン「生茶」をご馳走になりながら色々話を聞かせて頂いた。
キリンで2時間半程の見学を終えると、最寄のカシマばら園芸さんに立ち寄らせて頂いた。
突然の訪問にも関わらず、園主の岡部さんは、快く信州人の見学を許してくれた。
話を聞くと彼も私同様、品種選択や栽培方法に悩みを抱え、模索しているようであった。
かつて幕末に「鬼の副長」と呼ばれた男がいた。
新撰組副局長の土方歳三である。
彼は新撰組内の規律を厳しく定め、違反者はことごとく切腹させた。
あまりに厳しいその行為に、周囲からの批判もあったが、彼は一切ぶれなかった。
「ぶれない」
今の日本人が侍でないのは、「ぶれ」があるからではないだろうか。
人の意見を多く取り入れることは、至極大事な事だと思う。
しかし、最後の決断を下し、責任を取るのは飽く迄も己自身である。
私も心に二本差しを持つ者として、ぶれない男にならなければいけない。
2008年10月4日(土)「 秋雨を 燻らす西山 眺むれば まだ見ぬ京の おたくさを想う 」
バラにとっては悪天候が続く。
鬱蒼とした緑を纏った山々の頂には、ここ毎日の様に神々しい雲が空を覆っている。
あれ程、空梅雨であった反動であろうか。
南信州の短くも、暑い夏を耐え忍んだ我が家の庭木は喜んでいるようだ。
温室の中に入ると、雨音が強くて普段聞いているラジオが聞こえない。
雨音の中で漂うように仕事をしていると、ついつい妄想癖に拍車がかかってしまう。
「タイムトラベル」と言えば万民の夢であろう。
そこで私は「タイムロッカー」という装置を思い浮かべた。
箱の前後に扉が付いた大きな金庫の様な物で、「過去口」と「未来口」の扉がある。
例えば、相場が暴落に相反して花が多い時に「過去口」からバラを入れておく。
そして需要期に「未来口」から過去から来たバラを取り出す。それでも注文が重なりバラが足りない時は「過去口」を明けてバラを取り出す。
しかし、後者の場合は必ず取り出した分のバラを将来「未来口」から入れておかなければならない。
もちろん、タイムトラベルをしてきたバラは新鮮そのものだ。
ここで用心しないといけないのは、扉を開けた時にロッカーの中で未来や過去の自分と会ってしまう場合がある。
そうなると「タイムパラドックス」という現象が起きて、最悪の場合は宇宙が崩壊してしまう。(バック トゥ ザ フューチャー参照)
そんな宇宙規模の危機的な状態を案じることも無く、現実は注文の対応に四苦八苦する。