やっと午前中の「修行」が終わり、友達と窓辺で弁当を食べる。学校という檻の中で楽しい事といえば友達との談笑ぐらいだ。
ふと健一が窓の外を眺めると見慣れた車が校門の近くに止まっている。「まさかっ!」と思って車の周辺を見回すとコソコソ校舎から出てくる女性がいる。
母だ。健一は友達に悟られないように視線を逸らす。腹の中は煮えくり返っている「何してんだ!あの女っ!!」
「おい。健一早く行こうぜ!」
急に呼ばれて焦って我に返る。状況は掴めてないが友達の手元を見て思わず。
「ヤバイっ」と言葉が漏れる。
午後一の授業は今日から始まるプールの授業だ。体育の教師は学校一ウザかった。
テンションが下がる中、携帯にメールが入る。
「寒くてもしっかり泳げ! 水着、下駄箱。 母より」
「助かった!」と息を吐くと同時にさっきの怒りの反面、急に申し訳ないように思えてきた。
家の近くにある花屋。普段から知ってはいるが健一は入ったことなど無い。なかなか思春期の男子が入れる雰囲気ではない。とは言え入ってみると案の定、若い女性店員が笑顔で寄ってくる。
急いで買いたい花を選ぶ。
「これ3本下さい。」
恥ずかしがる高校生がかわいいらしく店員は「くすっ」と笑いながら
「じゃあ、この咲いてるのはオマケね。」
と花を渡してくれた。
恥ずかしさとちょっとした嬉しさで顔がにやけるのを我慢しながら、上り坂を立ちこぎで一気に上る。
「帰ったの? おかえりー」
返事が無い。またシカトかと溜め息をこぼしながら食卓に目をやると。
「助かった。弁当もうまかった。」
と殴り書きのメモとバラが。
「かっこいいじゃん!」
と呟きながらリビングで牛乳を飲みテレビを見ている健一に目をやる母。
ありふれた毎日を特別な一日に
太陽みたいなお母さんにはイリオス!を